前回は、PostScript が誕生するまでの経緯と、当時、専用機オンリーだったプリンタメーカー各社各様の、プリンタ事情をお話ししました。
今回は、PostScript の誕生が、いかに画期的なものだったかを検証していきます。
2. 革命的ページ記述言語:PostScript とは
では、PostScript とは、いったいどんなものなのでしょうか。これも、フォントフォーマット同様、すらすらと説明できる人は少ないと思います。
PostScript は他の PDL にはない、大きな「特長」があります。そう、「特徴」ではなく「特長」です。それは、汎用プログラム言語としての機能を持っていることです。
●革命的だった「デバイスに依存しない」ということ
プログラム言語というと難しそうですが、身近な有名どころをあげると、Perl、JavaScript、PHP、Ruby などがあります。プログラムの内容は知らなくても、これらの恩恵には多分、ほとんどの人が浴しているので、便利で汎用性の高いものだということはわかりますね。
JavaScript はウェブページに動的要素を加えるのに欠かせませんし(近年〈2017年現在〉は CSS3 に存在をおびやかされ始めていますが…)、PHP も、HTML に埋め込むことができる利便性で、WordPress などに取り入れられているように、やはりウェブページには欠かせない言語になっています。
つまり、プログラム言語は、数値の計算、動作のループ(繰り返し)、動作の選択などの命令をを高速で出力することができます。そして、プログラム言語のもう一つの特長、いや、最大の長所、デバイス(ハードウェア)を選ばないことです。
DTP は、現在の常識からいって、プリンタを選んでいたら仕事になりませんね。少なくとも2種類は異なるプリンター(出力機)を使うわけです。すなわち、校正用のプリント、製版用フィルムへの出力機です(当時はデータを直接印刷できるオンデマンドのような印刷機はありませんでした)。主流になっている PDF 校正は、他社のパソコンで表示・印刷するわけで、画面と同じ仕上がりにならなければお話しにならないのです。
PostScript は、プログラム言語の機能を発揮することで、デバイスインディペンデント(デバイスに依存しない)を実現したのです。
●PostScript の未来性を創造した Adobe、その未来性を見抜いた Apple
Apple は、その汎用性をいち早く見抜き、Apple LazerWriter に PostScript を搭載します。一方、本家の Adobe も PostScript と Type1 フォント(アウトラインフォント=PostScript フォント〈以下、PostScript Type1 と表記〉)をセットにして、各プリンタメーカーにライセンス供与し、デファクトスタンダードへの攻勢を本格的に始めていきます。
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LazerWriter も PostScript も、発表当初は、ほとんど注目を浴びることはありませんでした。不便さを抱えていながら、時代も業界も、まだ、「専用ワークステーション」主導という考えから抜け出せなかったのです。
しかし、徐々に PostScript の利便性が注目を集めるようになっていきます。このことが、のちの Adobe、Apple、Microsoft のフォントの覇権争いに火をつけることになっていくのです。
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