MOJI ESSAY

ようこそ「令和」

「令和」の「令」

新元号「令和」の時代がはじまった。近年では、天皇が健在なうちの改元は異例である。たぶん、これからもあまり起きえないことだと思う。

元号は、明治時代に一世一元というきまりができるまでは、天皇の崩御がなくても天変地異や火災、戦乱など、国に一大事が起きたとき頻繁に改元された。したがって、一年にも満たない短い元号は多数存在する。

この「令和」という元号が発表されたとき、真っ先に頭に浮かんだのは、「令」の字に関して字形の論議が起きるな、ということだった。

「令」は明朝体などの、形がデザイン的に整理された書体では下の部分が「卩」に似た字形、楷書などの手書きに近い書体および手書き文字はカタカナの「マ」に似た字形となっている。

文化庁によると「令」の字の形には正解や決まりはなく、形が多様な漢字の代表的なひとつだとしている。また、平成28年に出された指針では、「字の形の違いは習慣によるもので、本来は問題にする必要がない」と明記している。

つい先日、SNS 上で、役所関係の印刷物で、校正時に「令」の字にクレームが出たというものがあった。「マ令」ではダメだということらしい。そんな通達はどこからもでていないはずなのに、「令」が独り歩きを始めている。統一論議などが出ないことを願う。

西暦との併用

ところで、皆さんは西暦と元号、どちらを主に使っているだろうか。私は、もうずいぶん前から「西暦あたま」になっている。「年寄りなのに意外だね」などと嫌味をいわれることもあるが、気にしていない。

ショッピングサイトなどで、会員登録をする際は、ほとんど元号を選択するところはなくなっている。たまに、書類などで元号で書かなくてはならないときは一瞬戸惑うが、「平成」では、西暦の下二けたに12を足して変換していた。「令和」ではどうなるんだ? こんどは18を引くことになるのか…。すぐに頭が切り替わるか心配である。

後世からはどう呼ばれるのか

ひとむかし前、明治生まれのお年寄りにたいして、敬意を込めて「明治・大正・昭和の三代にわたる激動の時代を生き抜いてこられた…」という表現をしていた時期があった。これを聞くと、ものすごい長命のお年寄りを連想した。事実、明治年間が長かったこと、また、平均寿命が短かったこともあり、本当に筋金入りのお年寄りだった。

私も、その「お年寄り」の仲間入りして久しい。「令和」になった今、「昭和・平成・令和」の三代を生きていくことになった。後世は我々をどのように表現していくのであろうか。

 
2019年(令和元)5月1日:令和最初の日に記す

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