TYPOGRAPHY RULES

タイポグラフィ7つのルール その❹ 強調・複合などを盛り込む「たす」要素

タイポグラフィ7つのルール その❹ たす 強調・複合などを盛り込む「たす」要素

タイポグラフィルール ❹ たす
▼第2回(通算第13回)

前回は、文字の「サイズ」の「メリハリ」についてと、「変形」の用途についてお話ししました。テクニックの入口といってもいいでしょう。これを取り入れるだけで、デザインは見違えるほど良くなります。

今回は、フォントの「ウェイト」に重点を置き、「サイズ」との相関関係を明らかにしていきます。この回をマスターすれば、少なくとも、デザインをする上での難問、フォントのサイズ選定、ウェイト選定に悩むことがなくなります。

第2回:通算第13回
もくじ
4.3 フォントのウェイトを上げる
  4.3.1 ●フォントのウェイトとは
  4.3.2 ●日本語で表すには無理があるウェイトの名称
4.4 ウェイトとサイズの関係
  4.4.1 ●大切にしたい「サイズ感覚」
  4.4.2 ●活字の時代
  4.4.3 ●手動写植機の時代
  4.4.4 ●役割を知ることは、デザインに迷わなくなること
  4.4.5 ●ULとELウェイトについて

4.3 フォントのウェイトを上げる

グラフィックデザインでは、一つの作品に3~4種類の異なる書体を使うことが推奨されています。これは、どの参考書やサイトの説明を見てもそのように書かれています。そして、「やたらとたくさんの書体を使ってはならない」というのも共通の論調です。まさにその通りです。

デザイン初心者は、ウェイトの太い書体を敬遠する傾向があります。その原因は、システムフォント(デフォルトで組みこまれている書体)が、Mac ではヒラギノ角ゴシック、 Windows が小塚ゴシックのR(レギュラー)と、ともに細い書体を採用していることにあると思います。

システムフォントだけでデザインをすると、当然弱々しいものにならざるを得ません。お使いのマシンに、もしウェイトが太めの書体がインストールされていたら、勇気をもって使ってみてください。それだけで、デザインはいきいきとしたものになっていきます。

(figure4-5)
フォントの選定・ウェイトやサイズの決めかた次第でデザインは決まってしまう

(figure4-5)のキャプション

左は、Macに標準搭載されている「ヒラギノ角ゴ」と「ヒラギノ明朝」のみで制作したもの。ただ、文字が並んでいるだけのノッペリとしたものでしかない。読む意欲が湧かないデザインである。(いや、デザインとはいえない)

ただし、やみくもに太い書体を使えばよいかというと、それも違います。ウェイトとデザインの関係性は、けっこう深いものがあります。以下、しばらくウェイトについて論じていきます。

4.3.1 ●フォントのウェイトとは

多くのフォントには、ファミリーがあります。フォントファミリーとは、特定の骨格、肉付けを持った書体に、太さのバリエーションを与えたものです。それがあたかも家族のようなので、ファミリーと呼ばれています。もともとは、欧文がこの表記を使っていたもので、和文が輸入した形です。

太さには明確な基準はなく、書体デザイナーそれぞれの感性によって太さ(ウェイト)が決められており、それに伴う名称がついています。とはいえ、好き勝手な名称では、ユーザーが混乱するので、一般的に通用する呼び名をつける書体デザイナーがほとんどです。

余談ですが、私も実は当初、「和音9ウェイトファミリー」を発表する際、ウェイト名を「和音」の名前にちなんで、曲の早さをあらわす音楽用語の Lento(レント)から Vivace(ヴィヴァーチェ)までを当てはめようとしました。でも、いろいろ考えた末、断念しました。結果的には断念してよかったと思っています。自己満足だけで、ユーザー目線でないですものね。

書体にもファミリーがありそれぞれの表情がある

4.3.2 ●日本語で表すには無理があるウェイトの名称

さて、もっともポピュラーなのが、

ライト(Light:L=細)、レギュラー(Regular:R=中細)、ミディアム(Medium:M=中)、ボールド(Bold:B=太)、ヘビー(Heavy:H=特太)、ウルトラ(Ultra:U=極太)

の6種類です。ただ、これだけでは足りない場合が多く、それぞれに〔サブタイトル〕をつけるケースも目立ちます。

ライトより細い、ウルトラライト(Ultra Light:UL)、エクストラライト(Extra Light:EL)、
レギュラーとミディアムの中間、またはミディアムと同等、ブック(Book)、
ボールドを挟む形の、デミボールド(Demi Bold:DB)、エクストラボールド(Extra Bold:EB)、
ヘビーとウルトラの中間、エクストラヘビー(Extra Heavy:EH)、
ウルトラより太い、または同等、ブラック(Black)

などがあります。繊細な表現が特長の日本語ですら、訳すのに無理があるので和訳はつけていません。

(figure4-6)
フォントウェイトのイメージ

なお、ブック(Book)と、ブラック(Black)は和文ではあまり見られません。
逆に、欧文では、ウルトラ(Ultra)はあまり見られず、ブラック(Black)が使われています。
また、ヒラギノは W0 ~ W9 と、特有の名称を使用しています。

4.4 ウェイトとサイズの関係

フォントファミリーを長々と説明したのにはわけがあります。
それぞれのフォントには、文字組みをする際に、最も適切に機能する「文字サイズ」や「ウェイト」があるからです。

「文字サイズ」は、人によって使用している単位が、mm(ミリ)、pt(ポイント)、Q(級)、px(ピクセル)など多岐にわたるため、ここでは、デザインや編集現場で多用されている「Q」で表記します。また、「ウェイト」は、文字サイズと密接な関係があるため、この項でお話ししていきます。

4.4.1 ●大切にしたい「サイズ感覚」

現在は、デジタル化の中で仕事をしているため、「文字サイズ」は、非常にアバウトに決めていて、ここは「何Q」あるいは「何pt」などと決めてデザインをしているかたは少ないと思います。それでいいとは思いますが、実は、写真のキャプションに適したサイズ、本文に適したサイズ、リード文に、小見出しに、中見出しに、そして大見出しにと、それぞれ適したサイズがあります。

「適したサイズ」でデザインすると、なぜか締まったデザインになります。これは、活字の時代、手動写植の時代の先人たちが豊富な経験から創り上げた、偉大な知恵といえるかもしれません。この絶妙な「サイズ感覚」を、私は大切にしていきたいと思うのです。

懐古趣味的になりますが、活字の時代、手動写植時代の文字サイズに少し触れてみましょう。

この時代のデザイナーたちは、限られた種類を巧みに使いわけ、印刷文化・デザイン文化を創り上げていきました。限られていたからこそ、研ぎ澄まされた感性で、それぞれのサイズに絶妙な役割を持たせていったのだと思います。

私は、その、活版時代、写植時代を経験してきた、たぶん数少ない生き証人です。私にとって活字と写植は、デザインをしていく上での文字サイズ決定のプロセスに、大きなカギとヒントを残してくれた大恩人といっても過言ではありません。

4.4.2 ●活字の時代

活字の成り立ちや材質などのことは、別記事に譲るとして、簡潔に文字サイズの種類をあげます。
1962 年に JIS で「ポイント」が制定されるまで、日本では「号」を使用していました。活字の種類はわずか9種類。

大きい順に、初号・1号・2号・3号・4号・5号・6号・7号・8号です。

(数字が大きくなるにつれ、サイズは逆に小さくなっていきます)

初号、2号、5号、7号の順に1/2ずつ小さくなっていき、1号、4号の順に1/2ずつ、3号、6号、8号の順に1/2ずつ小さくなっていきます。基準になっている初号、1号、3号の間には物理的な関係性はないようです。

(figure4-7)
活字サイズのイメージ

(figure4-7)のキャプション

モニターによって見えかたが異なるので、正確に伝える術はないがこんなイメージである。伝わるだろうか。
ちなみに、「初号」はおよそ15mm角、「1号」は9mm角、「3号」は6mm角である。

4.4.3 ●手動写植機の時代

写真植字機(写植機)の文字サイズは以下の通り。単位は「Q」です。

こんどは小さい順に、6Q・7Q・8Q・9Q・10Q・11Q・12Q・13Q・14Q・15Q・16Q・18Q・20Q・24Q・28Q・32Q・38Q・44Q・50Q・56Q・62Q・70Q・80Q・90Q・100Q

の25種類です。
活字の約3倍の数になってはいますが、それでも25種類しか作れません。アナログなので限界があるのは当然ですが…。

(figure4-8)
写植文字サイズのイメージ

(figure4-8)のキャプション

活字よりは、ずいぶん種類は増えたが、それでも25種類しかない。

キャッチフレーズなどに使用する多くの場合は100Q以上になる。その際は、100Qで打ち出した文字を「製版所」に依頼して、指定のサイズに拡大し、印画紙に焼いてもらっていた。

時間のないときはコピーで拡大したものを、色指定などを書き込むトレペに貼り込んでサイズ指定し、製版所で製版(印刷用のフィルムに起こすこと)ついでに拡大してもらうこともあった。

私は、モリサワの写植機で仕事をしていたが、発売当初の機械に搭載された「70Q」以上は、焦点距離の関係で文字が歪んでしまい使いものにならなかった。 街角のカーブミラーに映った像を想像して欲しい。あんな感じだ。そのせいで、「62Q」で打ち出した文字を拡大するしかなく、当然、元が小さいので拡大した文字がぼけてしまうが、それを使うしかなかった。

まもなく、モリサワも企業努力で、焦点距離を改善したレンズを売り出し、「70Q〜100Q」を正常に使うことができるようになった。笑い話のようだが、本当にあったことである。
ちなみに、最大の「100Q」は25mm角、最小の「6Q」は1.5mm角である。

私は、すでに機械を手放してしまい、写真も残していないので、イメージを伝えられないな、と思っていたところ、写真つきで詳細に説明しているサイトがありました。
亮月写植室” をぜひ訪れてみてください。

4.4.4 ●役割を知ることは、デザインに迷わなくなること

さて、それぞれのサイズを、用途別(キャッチコピー、大見出し、中見出し、小見出し、リード文、本文、キャプション)に当てはめてみます。そしてさきほどの、ウェイトも加味します。文章では煩雑になるので、図であらわしましょう。

(figure4-9)
フォントウェイトとサイズの関係

このようになります。

念のため、表(ひょう)形式にもまとめてみました。

ウェイト:略称 用途 Q(写植) 号(活字)
Ultra Light:UL キャッチコピー 100Q以上  
Extra Light:EL キャッチコピー・大見出し 100Q以上・100Q  
Light:L 本文・リード文 10Q~15Q 6号・5号
Regular:R 本文・リード文
キャプション
10Q~15Q
6Q~9Q
6号・5号
8号・7号
Book 本文・リード文 10Q~15Q 6号・5号
Medium:M 本文・リード文 10Q~15Q 6号・5号
Demi Bold:DB 小見出し 16Q~20Q 4号
Bold:B 中見出し 24Q・28Q 3号
Extra Bold:EB 大見出し 28Q・32Q 2号
Heavy:H 大見出し 32Q~44Q 1号
Extra Heavy:EH 大見出し 50Q~62Q 初号
Ultra:U キャッチコピー 70Q~90Q  
Black キャッチコピー 100Q・100Q以上  

デザインを始めたばかりだと、文字のサイズひとつ決めるのも大変迷うものです。本文の大きさは決まったけど、中見出し、大見出しのサイズをどう決めたらよいかわからないときなど、この表はきっと役に立つと思います。

なお、これはあくまでも、私の主観です。必ずしもすべてのデザインに当てはまるものではありません。

このサイトでも詳細を知れます。“CyberLibrarian 図書館員のコンピュータ基礎講座〈上綱秀治さんのサイト〉” ただ、このサイトは閉鎖しているため、いつ削除されるかわかりません。貴重な資料なので、できればずっと残して欲しいですが…。

4.4.5 ●ULとELウェイトについて

「AXIS」は UL と EL のウェイトを持っていることで有名です。この両ウェイトは、細すぎるので可読性という点で本文には不向きです。作者の 鈴木 功 氏(タイププロジェクト)は、初めから見出し用に使用されることを狙って制作されたようです。実際キャッチコピーに使用すると、実に素晴らしい効果がでます。

● ● ●

次回(第3回:通算第14回)は、[合成フォント]に、話題を絞ってお話ししていきましょう。予告下ページャ[3]のをクリックを。

第3回:通算第14回
予告
4.5 [合成フォント]を使って表現の幅を広げる

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コメント

    • works014
    • 2017年 10月 10日

    私の書き方が悪かったと思いますが…
    基本的にベースラインで揃えられることと字送りピッチとは無関係です…
    ともあれ、大き過ぎる仮名、あるいは小さく見える仮名などをベタ組みで使いたい際には、「中央から〜」が必須なのはご理解いただけると思います…これをすることによって「欧文ベースライン」の縛りから解放されますので…

      • KAZ
      • 2017年 10月 11日

      大石さん、ありがとうございます。
      まったく、言葉が足りていませんでした。追記、加筆修正しました。

    • KAZ
    • 2017年 10月 04日

    大石さん、いつもありがとうございます。
    早速、追記します。

    • works014
    • 2017年 10月 04日

    合成フォントは基本的に欧文ベースラインを元に揃えられます
    なので、仮名などの比率を変更し字送りピッチを維持したい場合は、
    中心から拡大/縮小をチェックする必要があります

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