タイポグラフィ7つのルール その❻-3 文字組みを見やすくする[行頭・行末・分離禁則]、しかし…

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タイポグラフィ7つのルール その❻-3 文字組みを見やすくする[行頭・行末・分離禁則]、しかし…

タイポグラフィ7つのルール ❻  くむ
▼第3回(通算第20回)

前回は、美しい紙面を作るための代表的な8つの文字組み推奨事項を、詳細にお話ししました。かなり長い説明になってしまいましたが、いかがでしたか?

今回は、以下のタイトルの通り、一筋縄でいかない和文組版について、さまざまな角度から検証していきます。

第3回:通算第20回
もくじ
6.4 一筋縄でいかない和文組版
  6.4.1 ●行頭や行末のルールなどを定めた[禁則処理]
  6.4.2 ●新聞・雑誌などの場合はどうしているか
  6.4.3 ●組版ルールを設定する[文字組み](デフォルト)
  6.4.4 ●デフォルトでは限界が…、カスタマイズの必要性

6.4 一筋縄でいかない和文組版

和文の文章組みには[エリア内文字入力]で[均等配置(最終行左揃え)]にすることが大前提であることは、前項までで何度もふれてきました。そして、この[エリア内]で文章を編集するには、[禁則処理]と[文字組み]方法を知らなくてはなりません。

Adobe Illustrator では、[段落]の中に[禁則処理]と[文字組み]の項目があります。

ウィンドウ>書式>段落

(figure6-10)
[禁則処理]と[文字組み]

6.4.1 ●行頭や行末のルールなどを定めた[禁則処理]

[禁則処理]は、本来、前項の “6.3 美しい紙面を作る8つの文字組み推奨事項” で語るべきものですが、Illustrator では、デフォルトで[強い禁則](禁則ルールが「ON」)になっていて、自動的にやってしまうので、あえて外し、この項で取り上げました。

そんなわけで、[禁則処理]はあまり意識しないかたが多いようです。

[禁則処理設定]は、❶[行頭禁則文字]、❷[行末禁則文字]、❸[ぶら下がり文字]、❹[分離禁止文字]の4種類からなっています。[禁則処理]の選択ボックス内の一番下[設定…]を開くと確認できます。

ウィンドウ>書式>段落>禁則処理>禁則設定…

(figure6-11)
行頭や行末のルールなどを定めた[禁則処理]

[行頭禁則文字]は、行頭(行の1文字目)にきてはいけない文字のこと。終わりのかっこ類、小書き文字(促音・拗音)などがあります。

[行末禁則文字]は、行末(行の終わり)にきてはいけない文字のこと。始めのかっこ類、始めの引用符がこれにあたります。

[ぶら下がり文字]は、句読点の処理のこと。たとえば、13字詰めの文章で、14文字目(テキストオブジェクトの外)に配置すること。(縦組みにしたとき、この 【、】や【。】が段の外にはみ出て、ぶら下がって見えることからこの名があります)

❹最後に[分離禁止文字]。これは、ダッシュ【-】、2点リーダー【‥】、3点リーダー【…】をそれぞれ2本連続で使った場合、2行にわかれることを禁止するものです。

[禁則処理]は、可読性を高めるために必須ですが、あまりに厳格に用いようとすると、見た目に破たんが生じるという、大きな矛盾もはらんでいます。和文文字組みの本当に難しいところです。

6.4.2 ●新聞・雑誌などの場合はどうしているか

新聞、雑誌など一段の文字数が少ない読み物は、①小書き文字(促音・拗音)を行頭にもってくる、②ぶら下がりをしない、③句読点の追い込みをしない、など、可読性より見た目を重視するものが多いようです。(雑誌では、ぶら下がりを選択しているところはかなりあります)

① 小書き文字を行頭にもってくる[弱い禁則]

「小書き文字」とはひらがな・カタカナで小さく表記するもの

「ぁ・ぃ・ぅ・ぇ・ぉ・っ・ゃ・ゅ・ょ・ゎ」 「ァ・ィ・ゥ・ェ・ォ・ッ・ャ・ュ・ョ・ヮ・ヵ・ヶ」

で、合計22文字あります。
本来は行頭にきてはいけない文字ですが[弱い禁則]にすると、行頭にもってくることができます。音引き「-」も[弱い禁則]で適用できます。

(figure6-12)
小書き文字を行頭にもってくる[弱い禁則]

(figure6-12)のキャプション

この2種類の[禁則]は、用途によって使い分ける。理想は[強い禁則]だが、行長(字詰めの数)により[禁則]の度合いを緩めざるを得ない。
左図は[強い禁則]、右図は[弱い禁則]である。[弱い禁則]の[行頭禁則文字]、[行末禁則文字]が少なくなっている。

左図で「赤ベタ」になっているのが、[弱い禁則]で適用外になっている文字である。
なお、これは、分かりやすく画像を加工したもので、実際のダイアログに色がついているわけではない。

② ぶら下がりをしない

ぶら下がりは、列からはみでるので、あまり格好のよいものではありません。したがって、これを嫌う傾向は強いものがあります。

(figure6-13)
ぶら下がりはできれば避けたい

(figure6-13)のキャプション

[ぶら下がり]を[標準]にすると、2か所のぶら下がりができた。ガイドの点線を引いておいたので、確認できると思う。
この例では、ぶら下がりをしたことで、左図ではあふれて消えてしまった文末「る。」が入ってきている。

[ぶら下がり]をしたり、後述の「追い込み」、[追い出し]を選択したりすると、思わぬことが起きる。美醜の予測は難しいので、いろいろ試して、賢明な判断を下すことが求められる。

では、ぶら下がりを選択しない場合の、13字詰めの文章で句読点が14文字目にくる場合はどうなるか。【、】や【。】はその行に[追い込む]か、次の行に[追い出す]かの、どちらかになります。

③ 句読点の追い込みをしない

「追い込む」とどうなるか? 13字詰めのように少ない段組みのとき、この1文字のウェイトはとても大きいのです。ひと文字追い込むことで、その分ほかの13文字の文字間を詰めることになります。そうすると、重なっちゃう文字がでてきます。したがって、追い込みは「見づらいから嫌だ」という編集者がほとんど。ではどうするかというと手段は2つあります。

(figure6-14)
句読点の追い込みをしない

(figure6-14)のキャプション

左図7行目では[追い込み優先]で行末の句読点が入った。しかしそのあおりで、8行目の行末は「ミ」まで入るはずが、その次に[行頭禁則文字]の「ュ」があるために、「ミ」は道連れで9行目に追い出されてしまった。8行目はそのせいで文字間が広がった。

[追い込み優先]になっていても、[行頭禁則文字]のほうが優先順位が高いので結果的に追い出されてしまう。

右図は文末に「る。」が追い出され、前の行の文字間が広がった。1文字残るのはNGなので、前の行を詰めて追い込むしかない。

1つ目は、[行末役物半角](デフォルト)を適用して、行末にくる句読点や閉じのカッコ類を半角扱い(構造的にはもともと半角分しかない)にします。これだとまだ半角出っ張っていますね。ですのでどこかで残りの半角分を詰めます。残りの半角は、その行にある句読点・約物がターゲット。[行末役物半角]を適用していると、そのターゲットは自動的に半角になります。数値的に帳尻をあわせるんですね(figure6-14❶)

でも、その行にターゲットとなる句読点・約物がない場合もあります。その場合は半角分を無理やり詰めちゃうか、2つ目の手段、[追い出す]ことになります。

[追い出す]とどうなるか? [禁則処理]の大原則、「句読点は行頭にきてはならない[行頭禁則文字]」から、ダメですよね。結局、句読点のひとつ前の文字を「道連れ」にして[追い出す]しかありません(figure6-14❷)

でも、これで解決(!)とはいかないんですね。一文字もっていかれた前の行は12文字しかありません。で、この12文字を均等に割っちゃうのです(figure6-14❸)。当然、間が空いてしまいますね。でもくっついて見づらいよりは「まし」という判断がたぶん大勢を占めているのだと思います。

 

どれをとっても最良の方法はなく、妥協の産物として、新聞や雑誌の文章組みは存在しています。ただ、これはあくまで新聞・雑誌など、1段の文字数が比較的少ない文章の場合で、すべての組版に当てはまるわけではありません。文章組みはできることなら[強い禁則]を適用すべきでなのです。

文章の組みは、さまざまな組版の条件や、クライアントの意向、編集者の考えかた、デザイナー個人の好みなどにより変わってきます。はっきりいって、こうすべきという明確な基準は、あるようでないのです。
でも、タイポグラフィの立場からいえば、美しく「くむ」ことが大前提であり、[禁則処理]によって、高い確率で起きてくる弊害をどう克服するかは、ひとえにデザイナーの力量にかかっているのです。

 

さて、次は[段落]のもう一つの設定項目、さまざまな組版の条件設定[文字組み]のお話しに入りましょう。
先に、デフォルトの説明、その次に「カスタマイズ」について触れていきます。

6.4.3 ●組版ルールを設定する[文字組み](デフォルト)

この設定項目は、句読点を中心に、約物類の扱いをどうするかという、役割をもっています。
さらにいうと、約物は、ほとんどがボディ(仮想ボディ)・字面枠の半分(50%)のスペースに収まっています。
その残りの半分(50%)のスペース(アキ量)を、行中・行頭・行末で[残す(50%)]のか、[無くす(0%)]のかの設定をします。

約物は、横組みの場合、句読点は左半分、始めのカッコ類、引用符は右半分、終わりのカッコ類、引用符は左半分に入っています。
縦組みでは、句読点は上半分、始めのカッコ類、引用符は下半分、閉じのカッコ類、引用符は上半分に入っています。

これらの扱いかたで、[文字組み]は大きく変わっていきます。

(figure6-15)
組版ルールを設定する[文字組み]

Illustrator の[文字組み]設定は、デフォルトでは、❶[行末約物半角]になっています。この他には、❷[約物半角]、❸[行末約物全角]、❹[約物全角]、❺[なし]の合計5項目からなっています。

ちなみに、InDesign は14項目(CS6時点)もあり、それに付随した[基本設定][詳細設定]ができるようになっています。それに対して、Illustrator はこの少なさの上、詳細な設定もできません。ゆえに「Illustrator は文字組みをするアプリケーションではない」といわれる大きな原因なのです。

さて、少ないといわれる5項目ですが、一応最低限の役割は果たしますので、説明していきましょう。
行末約物半角は、その挙動から、行頭・行末約物半角といって差し支えないと思います。なお、中黒(中点)は、なぜか[最小]設定を除くすべての設定で全角扱い(左右に25%のアキ量)になっています。

[文字組みアキ量設定]の[最小][最適][最大]とは

“3.1.2 ●数字(半角)や英文の、両サイドの空きについて” の中でも触れましたが、Adobeのユーザーガイド、日本語の書式設定には、このようにあります。

文字組みセットの作成
❺「最小」値は、禁則処理によって行を詰めるときに使用されます。「最適」値より小さい値を指定します。「最大」値は、両端揃えで行を広げるときに使用されます。「最適」値より大きい値を指定します。
Adobe ユーザーガイド:日本語の書式設定より引用

これだと、ちょっと分かりづらいですね。(figure6-14)でも説明した、[禁則調整方法]の[追い込み優先]、[追い出し優先]設定により変化する「値(数値)」のことをいっています。

[最小]値
[追い込み優先]で行末に約物が無理やり追い込まれることによる「ぎゅうぎゅう詰め」状態を回避するための数値。詰まる優先度が約物からになるので、[0%](単位が[%]のとき)になっている場合が多くなります。
(ちなみに、その行に詰めるべき約物がないときは、通常の文章〈漢字・両仮名〉が詰まってしまいます)

[最適]値
正常に組まれた場合に、適切にアキができるよう設定する数値のこと。[25〜50%]が多くなります。

[最大]値
[追い出し優先]で、行末から約物が追い出されるとき(道連れに1つ前の文字も一緒に追い出される)に起きる「スカスカ」状態を補うための数値。したがって、[最適]と同等か、それより大きい値になります。そうでないと「スカスカ」状態を埋められないからです。

[行末約物半角]
行末と行頭にくる句読点、約物類のアキ量を[無くし(0%)]ます。
行中は、約物類のアキ量を[残し(50%)]ます。また、【 あ、「あ 】のように右・左(下・上)のアキ量が重複する場合は、後にくるほうのアキ量を[無くし(0%)]ます。さらに【 あ「(あ 】のように同方向の約物が2種類連続する場合、「始め約物」は次にくるほう、「終わり約物」は始めのほうのアキ量をそれぞれ[無くし(0%)]ます。

[約物半角]
行末・行頭・行中のアキ量をすべて[無くし(0%)]ます。

[行末約物全角]
行末・行中にくる句読点、約物類のアキ量を[残し(50%)]ます。
行頭は[無くし(0%)]ます。また、【 あ、「あ 】のように右・左(下・上)のアキ量が重複する場合は、後にくるほうのアキ量を[無くし(0%)]ます。さらに【 あ「(あ 】のように同方向の約物が2種類連続する場合、「始め約物」は次にくるほう、「終わり約物」は始めのほうのアキ量をそれぞれ[無くし(0%)]ます。

[約物全角]
行末・行頭・行中のアキ量をすべて[残し(50%)]ます。ただし、段落1文字下げの次にくる場合は[無くし(0%)]ます。
また、【 あ、「あ 】のように右・左(下・上)のアキ量が重複する場合は、後にくるほうのアキ量を[無くし(0%)]ます。さらに【 あ「(あ 】のように同方向の約物が2種類連続する場合、「始め約物」は次にくるほう、「終わり約物」は始めのほうのアキ量をそれぞれ[無くし(0%)]ます。

[なし]
すべての句読点、約物類の文字幅をデフォルト状態(全角)にします。(アキ量自体を「なし(0%)」にするのではなく、アキ量の調整を「なし(しない)」にするということです)

(figure6-16)
5種類ある[文字組み]設定

このように、複数の種類があるということは、人により、場面により使いわけが起きるということです。どれが良いとは、一概にいえないのです。

それと、もう一つ大事なこと。デフォルトではどうしても見た目に不備がでます。ですので、カスタマイズする必要があります。以下はそれについて触れていきます。

6.4.4 ●デフォルトでは限界が…、カスタマイズの必要性

デフォルトの[文字組み]5種類は、それぞれ組版ルールに則った設定になっているようですが、それだけでは、明らかに「空きすぎ」「詰まりすぎ」の部分が生じます。いかにそれがルールだとしても、見た目に破たんが生じていれば、カスタマイズして修正しなければなりません。

私は組版のプロではありませんが、私でも気付く部分が数か所あります。

①[行末約物半角][約物半角]で、【 、「 】や【 」「 】【 )( 】のように、アキ量の「後ろ」と「前」が続くときのアキ量設定が広すぎる。
②[行末約物半角][約物半角]で、「英文」や「数字」の両サイドのアキ量が広すぎる。([行末約物全角][約物全角]の場合も空きすぎるので、詰めることが妥当と考えます)
③[約物半角]で、「句点」、「読点」のアキ量まで詰まってしまい狭すぎる。
④[約物半角]で、「約物」のアキ量が[0]では狭すぎる。
⑤[約物半角]で、「中点(中黒)」が半角扱いにならない。

こんなところでしょうか。

(figure6-16-2, 6-16-3)で、デフォルトと、上記に対処したカスタマイズの対比、カスタマイズの数値を。また(figure6-16-4)では、対比の拡大図を載せました。参考になるかどうか…。
(「ベタ組み用行末約物半角」のカスタマイズで「句点」、「読点」の数値を下げたのは、約物や英文の混在が多い、見本用のためです。和文のみのシンプルな文章には適用できません)

(figure6-16-2)
ベタ組みのデフォルト[行末約物半角]とカスタマイズしたもの

(figure6-16-3)
詰め組み用のデフォルト[約物半角]とカスタマイズしたもの

(figure6-16-4)
デフォルトとカスタマイズとの対比(拡大図)

● ● ●

次回(第4回:通算第21回)は、エディトリアルとグラフィックの違いや、英文混在文章・英文単独文章の問題点についてお話しします。

その❻-4 和文・英文が混在することで起きるさまざまな厄介なこと

第4回:通算第21回
予告
6.5 エディトリアルとグラフィックの違い
6.6 状況によって悲惨、英文混在文章組み
6.7 英文のみの文章組み

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