▼第2回(通算第17回)
前回は、基本中の基本、「原稿の整理」についてお話ししました。原稿の整理は、やってみると結構大変な作業です。「何でこんなことまで」という作業もないではありません。ほとんどが「校閲」的な作業工程。あらためて「校閲」の奥深さを知ることになります。
今回は、「ひく」要素のテクニック部分をお話ししていきます。「メリハリ」はまさにテクニックを駆使した表現方法なのです。
第2回:通算第17回 もくじ |
5.3 文字(文字列)を小さくする |
5.4 フォントのウェイトを落とす | |
5.5 約物(記号類)のサイズを落とす |
5.3 文字(文字列)を小さくする
要素の分量が多い場合、全体の文字(文章)を小さくすることでデザインが締まり、読みやすくなることがあります。これは、“タイポグラフィ7つのルール その❸ 息苦しいデザインの回避法は「あける」こと” で説明したことと、密接な関係があります。“3.3 ブロック(要素)同士の間隔” で使用した図で再度比較して見てみましょう。
前述した “タイポグラフィ7つのルール その❸ 息苦しいデザインの回避法は「あける」こと” でも述べた通り、要素同士の空間を「適切」に空けることはレイアウト上、極めて大事なデザイン処理になる。
この空間は「遊び」とも呼べるもの。「遊び」がなく窮屈なデザインは、要素同士を殺しあってしまい、印象を、ただうるさいだけのものにしてしまう。
右上図は、左上図を修正したもの。全体のスペースが同じ場合は、要素同士のスペースを空ける関係上、一つひとつの要素は小さくなる。しかし、比べてみれば一目瞭然だが、右の修正を加えたほうが、はるかに見やすい。
小さくすることが、マイナスではないことがわかると思います。
5.4 フォントのウェイトを落とす
各要素の中で、文章の占める分量が多い場合、全体のフォントウェイトを落とす、あるいは、細めの書体に変えることでデザインが締まり、読みやすくなることがあります。これは、紙面の「濃度」に関係があります。「真っ黒」よりも少し弱めの「グレー」のほうが目に優しく、見やすいのは誰の〔目〕にも明らかです。
デザインは、見てくれる人がいて、はじめて成り立つものです。目の疲労度を考えに入れてデザインする、思いやりを持つことはデザイナーの大切な資質といえます。その優しい心づかいが、良質のデザインを生みだす原動力になるのです。
5.5 約物(記号類)のサイズを落とす
主に見出しやキャッチコピーなど、大きな文字のときに効力を発揮します。特にカギ括弧、引用符が、とても良い具合になります。
上段、“和音” の左右の二重引用符に細工をしている。書体にもよるが、二重引用符はだいたい大きい。見出しに使う場合は、目立ちすぎるので小さくしたい。この例❶ではウェイトも「U」から「B」に落としている。
「文字で音楽を表現」の左右のカギ括弧も、大きすぎてダサい。これもサイズを落とすべきである。例❷では約1/2くらいに下げている。
下段、洋数字は、和文と混在させるときは、サイズを上げ、ベースラインを下げる(❸)。が、「カンマ」は逆にサイズを落とす。例❹では、「カンマ」のみもとのサイズのままにしてある。さらに、「カンマ」は下に飛び出て見えるので、ベースラインを上げたほうがよい。
約物は、一定の文字サイズを超えると、突然モンスターに変身します。その境目を見極める目や感性が必要になります。
見逃すと、見づらいばかりか可読性を損ね、デザインの質を落とします。落とすのは、約物のサイズですよ。お間違えなく。
あとがき
この章は、2回で終わりの短いものです。ただ、短いからといって、軽視して欲しくない章でもあります。まさに「シンプル・イズ・ベスト」。「引く」要素は、実は大変に重要なタイポグラフィテクニックなのです。
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次章 “タイポグラフィ7つのルール その❻ 細心の注意を払うべき大切な「くむ」こと” からは、アプリケーション上のテクニック、組版の知識などをお話ししていきます。ご期待ください。
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