前回、前々回と、Illustrator のさまざまな詰め機能をご紹介してきました。ちょっと、オタクっぽかったですかね?
でも、とりわけ和文を美しく見せるには重要な機能です。ぜひ使いこなしていただければな、と思います。
さて、今回は、欧文の詰め処理についてです。和文ほどではありませんが、欧文も使用する場面によっては詰めることが必要になります。図を交えながらご説明していきましょう。
第3回:通算第7回 もくじ |
2.3 欧文の詰め処理 2.3.1 ●欧文は詰めないのが基本 2.3.2 ●特定の文字同士が並んだときの特例文字間「ペアカーニング」 |
2.3 欧文の詰め処理
欧文は、和文と違い一定の横幅が存在しません。一文字ひともじが、独立した文字幅(プロポーション)を持ったプロポーショナル状のフォントです。したがって、パソコンに打ち出(出力)した瞬間にもう詰まっています。(この表現は欧文にはおかしいかもしれません)
2.3.1 ●欧文は詰めないのが基本
基本的に欧文は、[カーニング]したり[トラッキング]する必要はありません。欧文の文字間はデザイナーが緻密に計算し、欧文グリフの中で最も多い部位であるステム(縦の線)の並びを基準に、きれいに揃うように設計されています。
英文の美しさの根本的な要因はステムの規則性にある。
図は、Garamond Pro Regular を使用したが、この書体は星の数ほどある欧文書体の中でも、最高峰だと、私は思っている。本文にも、見出しにも優れたデザイン性を発揮する、オールマイティな傑作である。
この、文字と、文字間の絶妙なバランスは、ステムの規則正しい間隔によるものが大きい。
詰めたり広げたりしてしまうと、このバランスが崩れて、読みにくくなってしまいます。
ただ、見出しのように大きく使うときは、それなりに考える必要はあります。特に「単語間のスペース」は、文字が大きくなるに従い広く感じる度合いが高まるので、詰めたほうが締まります。私は75~25%くらいに詰めています。前後の文字によっては、まったくスペースを入れない場合もあります。
また、セリフ体はセリフがある関係で、どうしても文字間が広く空いています。特に伝統的なセリフ体の Garamond や Caslon などのように、セリフが強調された書体は文字間がより広めになっています。
したがって、文字サイズが大きくなると、デフォルトの文字送りではどうしても広すぎて間延びするのも事実です。私は適切に詰めるほうを選択します。
左図は、すべてデフォルトの状態。
下の行の Summer と Autumn、 Autumn と Winter の文字間スペースは同じ「半角スペース」にもかかわらず、かなりの違いがあるように見える。見出しに使う場合は、この「差」を埋める必要がある。
右図は、それを調整したもの。
下の行の Summer と Autumn の間の文字間は[65%]、 Autumn と Winter の文字間スペースは[0]である。そして[トラッキング]で[-10]にして文字間を詰めた。
また、上の行、Spring は文字間に[トラッキング]で[-25]を施して詰めてある。
この詰め処理は個人の好みもあるので、一概には推奨しませんが、私の経験上は、詰めたほうが見やすくなります。
2.3.2 ●特定の文字同士が並んだときの特例文字間「ペアカーニング」
和文の詰めを紹介した “2.1 プロポーショナル機能の限界” でも触れましたが、和文にはプロポーショナル機能を用いてもなおかつ、かなり手詰めを施さないと空いて見えてしまう部分が存在します。
これは、前後の文字形状の関係性で起きることですが、実は欧文でも、この現象は起こります。
このような場合は、欧文でも手詰めはしなければなりません。厳密にいえば、見出しなどに欧文を使う場合は、用意周到にプロポーションされた欧文といえども、手詰めを免れないのです。
ただ、ほとんどの欧文書体は、ペアカーニングという機能を加味しています。特定の文字が前後に並ぶと、通常の文字送りが、無視され、「特例の文字送り}が優先されます。つまり、勝手に詰めてくれちゃうんですね。これは優れものです。
書体デザイナーの立場でいうと、文字数の圧倒的に少ない欧文だからできる技なのかな、なんて思います。和文でこれをやると、膨大な数になってしまいます。でも、ヒラギノなど、ごく一部の書体はその機能を持っています(すごい!)。フォントワークス書体は一部で取り入れており、健闘しています。モリサワ書体も徐々に取り入れるようになってきたみたいです。
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次回(第4回:通算第8回)は、同じ和文でも、ここまで違うということを、詰め処理の観点からお話ししていきます。予告下ページャ[4]のをクリックを。
第4回:通算第8回 予告 |
2.4 詰めてはいけない和文書体もある |
2.5 [自動(メトリクス)]だけで済まない書体もある |
ですので「[自動(メトリクス)]を使わなくても、この[プロポーショナルメトリクス]にチェックを入れると、同じように詰まる。」という部分も間違っています。
コメントありがとうございます。
ご指摘のとおりですね。この部分削除しました。
ありがとうございました。
メトリクス(自動)とプロポーショナルメトリクスの違いは「誤差」ではありません。
メトリクス(自動)は「プロポーショナルメトリクス」と「(ペア)カーニング」を同時に発動する機能です。
ところが、手動でカーニングを(さらに)調整すると、
カーソル直前の文字の「プロポーショナルメトリクス」が外れるということになります。
なので、意図せぬ部分が「開く」のです。
端物で、文字数の少ないキャッチやリードならおっしゃることもわかりますが、目的や一度に読む文字量をはっきりさせず、ただ詰めろ詰めろというのは誤解を招くと思います。
やたらとなんでも詰めたがるデザイナーもどきには辟易しています。
コメントありがとうございます。
おっしゃることはよく分かります。ただ、「文字数の比較的少ないグラフィック作品」と申し上げていると思いますが…。
なんでもかんでも詰めるのは、私もすすめているわけではありません。
考え方は、中嶋さんと違わないと思っております。拙い文章で、真意を伝えることができず、申し訳ありません。
手ヅメの数値設定はそこではありません…ふたつ下の「テキスト」の「トラッキング」の項目のハズ。
「トラッキング」とはなっていますが「カーニング」も共通しています。
文字あるいは文字列を選択して反転していれば「トラッキング」、
カーソルを字間に置いているだけなら「カーニング」がその設定値に応じて変更されます。
また、「和文等幅」と「0」では異なります。
「和文等幅」では欧文の「(ペア)カーニング」は発動しますが、
「0」ではそれも発動しません。
コメントありがとうございました。
誤認がありました。オブジェクトやパスの移動と混同していました。初歩的なミスでした。
また、和文等幅と「0」については、書き忘れました。
いずれも記事は書き直しました。
大変申し訳ありませんでした。