タイポグラフィ7つのルール その❺ 「ひく」ことは、すべてがマイナスではない

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タイポグラフィ7つのルール その❺ 「ひく」ことは、すべてがマイナスではない

タイポグラフィ7つのルール ❺ ひく
▼第1回(通算第16回)

前章 “タイポグラフィ7つのルール その❹ 強調・複合などを盛り込む「たす」要素” では、 デザイン上の欠かせない法則「メリハリ」の「張り(ハリ)」の部分を中心にお話しを展開しました。

この章『タイポグラフィ7つのルール その❺ 「ひく」ことは、すべてがマイナスではない』では、メリハリの「減り」についてお話していきましょう。“3.5 ただの余白ではないホワイトスペース” でもお話ししましたが、サイズやウェイトは大きく太いから目立つわけではなく、小さく細いから目立たないわけでもありません。

「ひく」「減り」は、一般的にはマイナス要素ですが、実は目立たせる、読ませる大変重要な要素となりえるのです。

テクニック的なことは少しあとにして、一番基本的な「原稿の整理」についてちょっと触れておきましょう。

第1回:通算第16回
もくじ
5.1 「原稿の整理」は極めて重要な作業
5.2 「整理」することは「片づける」こと
  5.2.2 ●箇条書きにする
  5.2.3 ●項目が多いときは箇条書きよりも表(ひょう)形式にする
  5.2.4 ●分かりづらい表現の部分は図表をおこす
  5.2.5 ●キャッチコピーを考える

5.1 「原稿の整理」は極めて重要な作業

この項は、本来であれば一番最初にお話しすべきことですが、分類の関係上、ここでようやくの登場です。
私は、編集者としての経験はありません。したがって、経験で得たことしかお話しできませんが、デザインの仕事をしていれば、否応なしに通らなければならない部分ですので、私なりの仕事のやりかたを通してお話ししていきます。

大きいデザイン会社に勤めていれば、役割分担がはっきりしているので、原稿を隅から隅まで目を通すことはないかもしれませんが、個人で仕事をしている場合は、何から何まで一人でやらなければなりませんね。私もその一人です。

私の場合は、いわゆる「おまかせ」でくる仕事がほとんどですので、原稿は当然ながら、整理されてきません。文章原稿やら、写真やらがドサッと持ち込まれます(さすがにDTP時代に入ってからは、データで来るので「ドサッと」という表現はあたりませんが…)。でも、「おまかせ」は結構ツライ…。

山積みの原稿

この項の「原稿の整理」を、「ひく」要素に持ってきたのは訳があります。

「原稿の整理」は、原稿の量を減らす(ムダをそぎ落とす)「ひく」要素だからです。これをするにあたっては、クライアントに必ず、文章を直す場合があること、タイトルコピーを変更することがあり得ること、など大事なことを伝えて了解を得ておきます。あとでの紛争を避けるためです。

5.2 「整理」することは「片づける」こと

このブログの趣旨はタイポグラフィ。したがって、一番重要で、一番厄介な「文章を片づける」ことに的を絞りましょう。あくまでも「私の場合は」です。お忘れなく。

5.2.1 ●文章を校閲する

  • 「です・ます」か「だ・である」の統一
  • 難解・難読漢字を「ひらく」(漢字をひらがなにすること)
  • 年号や単位、数字などの統一
  • 重複部分がないかをチェック
  • 言い回しがおかしい部分の修正
  • 事実関係の確認 など

最近、石原さとみさんの主演で「校閲ガール」(日本テレビ系で2016年10月から12月まで放映)というドラマがヒットしました。上にあげた項目は明らかに、その「校閲」の仕事ですが、他にやってくれる人がいなければ自分でやるしかありません。

やってみると、これがいかに大事な仕事かがわかります。なぜなら、デザインの仕上がりに差がでるからです。

相手がいることなので大変難しいことですが、あとから入ってくるかもしれない修正点を察知して、それを未然に防ぐことも大切なこと。何もせずに、文章の修正が校正段階で入ったとき、デザインの雰囲気が変わってしまうことはデザイナーなら誰もが経験する、とてもいやなことです。

修正が入るとデザインが変わってしまう

5.2.2 ●箇条書きにする

冗長な文章は、正直いって読まれません。たとえば、何かを説明する文章だった場合、箇条書きにできる部分が含まれていることがあります。これを見極めることが大切です。
読まれないデザインはもはやデザインではありません。特にタイポグラフィには、「読ませる」という機能を向上させる力がなくてはなりません。

5.2.3 ●項目が多いときは箇条書きよりも表(ひょう)形式にする

箇条書きの項目が多いとき、共通項がまとめられたり分類ができるときは表(ひょう)組みにすることをおすすめします。これだけで、訴求力は格段にアップします。

5.2.4 ●分かりづらい表現の部分は図表をおこす

文章で長々と商品の説明をしてくる場合はかなりあります。これでは読む人にイメージが伝わりません。ダイレクトにイメージを伝えるには図表に置き換え、「インフォグラフィック」的な見えかたにするのが一番です。

5.2.5 ●キャッチコピーを考える

支給された文章に気の利いたタイトルがない場合、自分で考えるしかありません。私はコピーライターではないのですが、これもやっています。

たとえば、商品のパンフレットだったら、商品の特長よりも、この商品を使うことによってどれだけユーザーの悩みを解決できるか、幸せを感じてもらえるかという「ベネフィット」を表現すべきです。
こんなことを念頭に置いてコピーを考えています。

コピーライトも重要なデザイン要素

いってみれば、「地味」な作業ですが、ここをおろそかにすると、決して良いデザインは望めません。
「シンプル・イズ・ベスト」という言葉があります。「原稿を整理する」とは「ひく」要素ばかりとはいえませんが、「メリハリ」を与えるという意味では、究極の「ひく」要素なのかも知れません。

● ● ●

次回(第2回:通算第17回)は、こまごまとしたタイポグラフィのテクニックを図解を交えてまとめました。予告下ページャ[2]のをクリックを。

第2回:通算第17回
予告
5.3 文字(文字列)を小さくする
5.4 フォントのウェイトを落とす
5.5 約物(記号類)のサイズを落とす

1

2

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